平成28年度沼津市民間支援まちづくりファンド採択事業

NPO法人ユートピア主催  聞き書きワークショップ

 

◇平成28101日(土)13301600 @プラサヴェルデ4403会議室

◇講師:六車由実(NPO法人ユートピア理事、デイサービスすまいるほーむ管理者・生活相談員、介護民俗学実践者)

 

 


聞き書きワークショップを終えて
NPO法人ユートピア理事 六車由実

平成28年12月8日

 初めて、地元で「聞き書きワークショップ」を開催することとなり、どれだけの人が集まってくださるかととても心配したのですが、当日は、当初予定していた定員をはるかに超える36名の方が、県内外から参加してくださいました。参加された方は、介護職として現場で働いている方もいれば、地域の診療所で医師をしている方やご家族の介護をされている方、地域づくりにかかわる学生の方、障害者教育に関わる教員の方など実に様々。多様な立場の方が聞き書きに関心を持ってくださったのが、私にとっては驚きでもあり、とても嬉しく思えました。

 当日は、まず、私の方から、すまいるほーむでの聞き書きの様子を撮影した映像などもお見せしながら、実際の聞き書きの在り方や面白さをお伝えしました。
すまいるほーむで私たちが行っている介護民俗学の「聞き書き」。それは、語り手と聞き手との対話による共同作業です。聞き書きによって、本を作ったり、思い出の味を再現したり、人生すごろくを作って遊んでみたり。そうすることで、その方の思い出がみんなに共有され、利用者さんもスタッフも互いに思いやる関係が築かれていきました。
「支援」をする立場からいったん解放されて、「表現として」聞き書きをすることによって、支援の場に人と人としての関係が回復していくのではないかと思います。また、聞き書きが「1対1の対話」から、その場にいる利用者さんやスタッフみんなを巻き込んだ「オープンな対話」へと開かれていくことによって、様々な経験や立場の人たちの言葉が重なり合い、力が集約されて、聞き書きも表現の在り方もより豊かになっていきます。
前半は、そんなお話しをさせていただきました。

(最初のお話しで使用したレジュメのPDFは、こちらからダウンロードできます。)

 後半は、5~6名のグループに分かれ、聞き書きを体験していただくグループワークです。今回は、昨年末からすまいるほーむで取り組んだ、聞き書きによる「すまいるかるた」作りを体験していただきました。「すまいるかるた」作りには、聞き書きの特徴が集約されていますし、聞き書きの導入におけるエクスサイズにはもってこいだと思ったのです。
「すまいるかるた」作りにおける聞き書きは、語り手と聞き手との対の関係が中心となりますが、そこにグループの他のメンバーも聞き手として加わることで広がりも深まりも見せていく面白さがあります。また、聞きっぱなしではなく、聞いた内容は、その場でかるたの読み札にまとめます。その読み札を作る作業も、みんなで協力して行うのです。1時間余りをかけたグループワークでは、最初はみなさん戸惑われていたようですが、少しずつ聞き書きが展開していき、最終的にはどのグループも個性豊かな読み札がいくつも出来上がっていました。そして、それとともに、見知らぬ存在であったグループのメンバー同士が「すまいるかるた」作りを通して、旧知の友であるかのように親しみを感じるようになった方も多かったようでした。

 アンケートにはこんな感想が寄せられました。いくつか紹介します。

 

・聞き書きからコミュニケーションが広がるのを感じました。(最初は知らない人→前から知っている人)もっともっとこのメンバーと一緒に時間を過ごしたいと思いました。(60代女性)
・大変意義のあるワークショップでした。まず簡単な自己紹介から始め、県立大学の先生、その学生、福祉関係の女性3人と私の6人のグループでした。グループの編成に配慮して頂いたので、質の高い話し合いができました。今回のワークショップのようにテーマやねらいを決めて話し合えば、いろいろの集団で活用できることを知りました。(70代男性)
・高齢者への「聞き書き」の効果については以前から感じていたので興味を持ちました。個人への聞き取りしかイメージしていなかったので、デイサービスのような場で、みんなで情報共有するという方法の効果と面白さを実感しました。いろんなところで応用できそうですね。(40代女性)
・今回の「聞き書きワークショップ」でのかるた作り、とても参考になりました。グループみんなで発言して相談しながら作れるかるたは、良いものになりました。かるたの中に書いてある「言葉」を話し手の言う単語をそのまま使い、そのまま使いすぎるくらいが、ちょうど良く、その人を表す「かるた」になることがわかりました。とても面白かったし、楽しかったので、現場でも生かして、今後も聞き書きをしたいと思います。(20代女性)

 

 また、ワークショップ終了後には、プラサヴェルデ内のカフェで軽食をいただきながら交流会を開き、20名近くの方が参加されました。
 さまざまな立場の方が参加された交流会では、参加者の何人かから実際に現場で聞き書きを進めていくにあたってぶつかっている問題(どのように表現したらいいのかとか、認知症の方にはどのように聞き書きをしたらいいのか、等)について話題提供がされると、自分たちも同じような壁にぶちあたっているとか、自分たちはこうしているといったような様々な意見が出され、活発な意見交換ができました。
 私としては、予想以上に、介護や医療、福祉の現場をはじめ、様々な関心のもとに既に聞き書きを始めている方が多いことを知り、何だかとても嬉しく思いました。
 聞き書きは、これといったひとつの決まった形があるのではなく、それぞれの現場の状況やメンバーに応じて、いろいろと工夫しながら形を変えていくのがよいのではないかと思います。まずは、みんなで聞き書きを楽しむ事、それがなにより大切です。
 いつかまた、それぞれの現場でどのような聞き書きを進めているのか、互いに情報を交換する場を設けられたらと思っています。

*参考として、介護民俗学の聞き書きについて関心のある方は、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの機関誌『季刊 政策・経営研究』2016.vol.4「特集 クリエイティブエイジング」に掲載された拙稿「『聞き書き』の自己分析―『オープンな対話』の可能性」をお読みいただければ幸いです。web版はこちらから